Webサイトのリニューアルは、見込み客との接点を強化する大きなチャンスです。しかし、「デザインはよくなったのに成果が出ない」「運用が続かない」といった悩みも少なくありません。
本記事では、BtoB企業のWeb担当者に向けて、実務上、特に注意したい施策ベースのポイントを3つご紹介します。さらに後半では、成果を出すために最も重要となる「リニューアルの目的や方針」をどう定めるのか、その考え方と進め方についてもわかりやすく解説します。
日々の運用に近い視点からリニューアル全体の方向性まで、Webサイトリニューアルで後悔しないために押さえておきたいポイントを整理していきましょう。
目次
サイトリニューアルで失敗しないための3つの注意点【デザイン・SEO・運用】
Webサイトのリニューアルは、見た目が新しくなるだけでは成功とはいえません。無事に公開したものの、「アクセス数やお問い合わせが減ってしまった」といった想定外の結果を招くこともあります。
そこで、リニューアル時に特に見落とされやすい3つの注意点をご紹介します。あらかじめ自社でしっかりと押さえておくことで、代理店や制作会社への依頼やプロジェクト進行時の判断が的確になり、成果につながるリニューアルへと近づけるでしょう。
ひとつずつ整理しながら、対策と一緒に解説していきます。
注意点1. デザイン設計が不十分で、お問い合わせやCVが減少
リニューアル後に「お問い合わせが減った」「資料請求が思ったように増えない」といった悩みを聞くことがあります。社内ではデザインに満足していたものの、ユーザーにとっては情報にたどり着きにくく、行動しづらい構成になっていた、というケースは少なくありません。
UI(ユーザーインターフェース)の本質は、デザインの美しさではなく、ユーザーの行動をスムーズに導く「使いやすさの設計」にあります。特にBtoBサイトでは、「サービス紹介 → 実績確認 → 資料請求」といった検討の流れがあるため、この動線を妨げない設計が重要です。
ここでは、CV(コンバージョン)最大化に向けておさえておきたい、2つの対策をご紹介しましょう。
- 対策1. ナビゲーションや導線は「迷わない設計」にする
- 対策2. CTAとフォームは「行動を起こしやすい設計」にする
対策1-1. ナビゲーションや導線は「迷わない設計」にする
ユーザーがどこに何があるか迷わずたどり着けることは、コンバージョンに直結します。グローバルナビゲーションが直感的でわかりやすく、ページ内にも「次にどこへ進むべきか」が自然に分かるようなボタンやリンクが設計されているかを確認しましょう。
また、PCだけでなくスマートフォンでも情報を探しやすいレイアウトかどうかも大切な視点です。ユーザーが迷った時点で離脱してしまう可能性が高まるため、導線設計では「迷わない」ことを第一に考えることが重要です。
対策1-2. CTAとフォームは「行動を起こしやすい設計」にする
せっかく興味を持ったユーザーがいても、「どこから申し込めばいいか分からない」「入力が面倒だった」などの理由で離脱されてしまっては非常にもったいないですよね。
「この会社に相談してみよう」と思ったとき、すぐに行動できる環境を用意しておくことも重要です。「無料で相談する」「資料をダウンロード」など、ユーザーの次の行動を明確に示す表現がおすすめです。
また、フォームの入力項目が多すぎたり、スマートフォンでの操作がしづらかったりすると、せっかくの見込み客が離脱してしまいます。入力のハードルを下げることで、コンバージョン率の改善につながります。
詳しくはこちら: UIの意味をわかりやすく|UXとの違いとWeb担当者が押さえるべき改善ポイント
注意点2. SEO対策が不十分で、アクセス数が伸びない
Webサイトをリニューアルした直後に「検索順位が下がった」「アクセスが急減した」といった相談を受けることがあります。デザインや構成を一新しても、検索エンジンへの対応が不十分だと、これまで築いてきた評価を失い、検索からの流入が減ってしまう可能性があるためです。
BtoBサイトでは、検索からの情報収集をきっかけに商談や問い合わせにつながるケースも多いため、リニューアル時には特にSEO(検索エンジン最適化)への配慮が欠かせません。
- 対策1. 旧URLと新URLを適切にリダイレクトする
- 対策2. titleタグやmeta情報などSEOの基本を見直す
- 対策3. 検索意図に合ったページ構成にする
対策2-1. 旧URLと新URLを適切にリダイレクトする
リニューアルによってページ構成やURLが変わると、検索エンジンやブックマーク経由のユーザーが正しく遷移できなくなります。旧ページから新ページへの「301リダイレクト」を設定し、検索評価の引き継ぎとユーザーの利便性を担保しましょう。
対策2-2. titleタグやmeta情報などSEOの基本を見直す
意外と見落とされがちなのが、SEOの基本的な設定です。とくに、検索結果に直接影響する titleタグ や meta description は、ページごとにしっかり設計し直す必要があります。これらは、検索エンジンだけでなくユーザーにも見える情報で、検索結果でクリックしてもらえるかどうかを左右する重要な要素です。
また、検索エンジンにページを正しく認識させる設定も重要です。たとえば、検索結果に表示させたくないページに対しては「noindexタグ」を使うのが一般的ですが、誤って必要なページに適用してしまうと、検索結果に出なくなってしまうことがあります。逆に、「robots.txt」ファイルを使って検索エンジンのクロールを制限しすぎると、重要なページが検索に出てこなくなることもあります。
title・meta・クロール設定など、基本のSEO項目は、リニューアル前後で丁寧に見直しましょう。どれかひとつでも設定ミスがあると、アクセス数の減少につながる可能性があります。
対策2-3. 検索意図に合ったページ構成にする
ユーザーが検索するキーワードの背後にある意図(検索意図)を理解し、それに応えるコンテンツ設計が重要です。たとえば、サービス紹介ページを「導入事例」や「料金プラン」とセットで構成すると、見込み客の検討プロセスに寄り添った導線を作ることができます。
リニューアルは、SEOの基本に立ち返る良い機会でもあります。検索順位やアクセス数に大きく影響するため、リニューアルのタイミングで丁寧にチェックしておくことが大切です。
関連記事:SEO初心者向け SEOの概要と自社で今すぐできる分析・改善方法を解説!
注意点3. 運用の負担が大きく、Webサイトが更新されない
Webサイトは「作って終わり」ではなく、更新と改善を重ねていくことで成果につながります。とくにBtoB企業では、情報発信やリード獲得、顧客フォローなど、営業・マーケティング活動全体と連携させながら活用することが求められます。
ところが、更新のたびに外注が必要だったり、社内で誰も手を付けられない状態だったりすると、せっかくリニューアルしたサイトもすぐに活用されなくなってしまいます。
- 対策1. CMSを導入して、社内でスムーズに更新できる体制に
- 対策2. CRM・MAで営業とマーケティングを効率化
- 対策3. 運用体制と改善サイクルを設計する
対策3-1. CMSを導入して、社内でスムーズに更新できる体制に
まず必要なのは、専門知識がなくてもWebページの更新ができる環境を整えることです。CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を導入すれば、HTMLやCSSがわからない担当者でも、テキストや画像の差し替え、ページ追加といった日常的な更新や管理が可能になります。
たとえば、事例紹介やニュースリリース、資料ダウンロードページの追加などを社内で完結できるようになれば、情報発信のスピードが上がり、外注コストを削減しつつタイムリーな改善が可能になります。
詳しくはこちら:CMSとは?Webサイト運用の初心者が知っておきたい基礎知識・メリットを解説
対策3-2. CRM・MAで営業とマーケティングを効率化
Webサイトからのお問い合わせや資料請求を売上に変えていくには、営業とマーケティングの連携が欠かせません。
CRM(顧客関係管理)を活用すれば、見込み客や既存顧客の情報を一元管理できるため、「誰が、いつ、何に興味を持ったか」を社内で共有できます。これにより、資料請求後のフォローや、商談履歴の共有もスムーズになり、部門間の連携も強化されます。
詳しくはこちら:CRM(顧客関係管理)とは?機能や導入メリット、活用方法をわかりやすく解説
さらにMAでは、資料請求後に自動でステップメールを配信したり、一定のスコアに達した見込み客を営業へ引き渡したりと、限られたリソースでも「顧客育成」を仕組み化することができます。ツール活用により、少ない人手でも効率的に商談数を増やすことが可能になるでしょう。
このようなCRMやMAの活用で、Webサイトは「作って終わり」ではなく「売上につなげる仕組み」として機能するようになります。
対策3-3. 運用体制と改善サイクルを設計する
しかし、どれだけツールが整っていても、運用の仕組みがなければ活用は進みません。たとえば「誰がどのページを更新するのか」「定期的にデータを見て改善を検討する会議を開く」といった基本的な体制を整えるだけでも、継続的な改善がしやすくなります。
大切なのは、「誰が・何を・いつやるのか」を明確にすることです。
たとえば、月次でアクセスデータを確認し、改善点を話し合う定例会を設けるだけでも、継続的な運用と成果改善につながります。Webサイトを成果の出るツールに育てていくには、改善のPDCAサイクルを社内で回していける仕組みが必要です。
Webサイトの活用には「仕組み」と「体制」の両輪が不可欠といえます。
最も注意したい点は「リニューアル目的や方針が曖昧なこと」
ここまで、デザイン・SEO・運用といった実践的なポイントを紹介してきましたが、もうひとつ、成果に大きく影響する重要な注意点があります。それは「リニューアルの目的や方針が曖昧なまま進んでしまうこと」です。
BtoB企業のWebサイトリニューアルは、「デザインが古くなったから」などの見た目の課題から始まることが多いですが、それだけでは十分な目的とは言えません。「なぜ、デザインを新しくしたいのか」という点を、一歩掘り下げて整理すると「リニューアルで目指すべき方向性」が明確になります。
たとえば「信頼感を高めたい」「お問い合わせを増やしたい」など、期待する効果を社内で言語化しておくことで、リニューアルで本当に実現したい目的が見えてきます。
前半でお伝えした実践的な注意点は、Web担当者が主導で取り組める範囲ですが、リニューアルの目的や方針は、企業全体のWeb戦略として考えるべきテーマです。リニューアルを推進する担当者がひとりで抱え込まずに、経営層や関係部門と対話しながら、しっかりと方針を定めていくことが大切です。
Webサイトをどのように活用し、どんな成果を目指すのか。最初にこの目的と役割を明確にすることで、制作会社とのやり取りや社内の判断もブレずに進みます。また、リニューアル後の成果を正しく評価するためにも、目指すゴールを定義しておくことが欠かせません。
- 対策1. Webサイトの役割とリニューアル目的を整理
- 対策2. ペルソナ・KPIを定めて、課題分析・要件を定義する
- 対策3. RFPを作成して、目的に合った提案を引き出す
対策1. Webサイトの役割とリニューアル目的を整理
BtoB企業にとって、Webサイトは見込み客や取引先、株主、求職者など、ビジネスに関わる相手との重要な接点です。営業前の情報収集や比較検討がオンラインで進む今、Webサイトは、見込み客の獲得・育成を担う営業ツールとしても欠かせません。
コーポレートサイトの主な目的は次の3つです。
- 企業のブランド認知や信頼性を高める
- 見込み客との接点をつくり、商談やお問い合わせにつなげる
- 求職者に企業の魅力を伝え、応募意欲を高める
また、BtoBサイトにはサービス紹介に特化した「サービスサイト」などもあり、それぞれの役割を意識した設計が求められます。まずはWebサイトの目的を定め「何のためにリニューアルするのか」を社内で明確にしましょう。
詳しくはこちら:コーポレートサイトとは?BtoB企業が成果を出すための役割・設計・運用を解説
対策2. ペルソナ・KPIを定めて、課題分析・要件を定義する
目的やサイトの役割を整理したら、次は「どんなユーザーに、何を届けたいのか」「成果をどう測るのか」を明確にするステップです。具体的には、ペルソナ、KPI(重要業績評価指標)を定め、現状サイトの課題を分析し、サイトリニューアルの要件定義へと進みます。
ペルソナの設定
まず重要なのが、ペルソナの設計です。自社サービスに関心を持つ「理想的な顧客」を具体的に想定することで、コンテンツや導線設計の精度が上がります。想像だけに頼らず、営業担当者へのヒアリングや既存顧客へのインタビューをもとに作成すると、より実用的です。
詳しくはこちら: 【テンプレ付】BtoBペルソナの作り方とは?注意点と活用メリットを解説
KPIの設定
つぎに、ペルソナがWebサイト上でどのような行動をとってほしいかを明確にし、それを評価できるようKPI(成果指標)を設計しましょう。たとえば「資料請求数」「お問い合わせ件数」「サービスページ閲覧率」などが挙げられます。
詳しくはこちら: 【図解】KPIとは?意味や具体例、設定方法を簡単にわかりやすく解説
Webサイト現状分析と競合分析で課題を抽出
そして、今のWebサイトがなぜ成果につながっていないのかを把握するために、課題の洗い出しをおこないます。ここでは、定量データ(アクセス解析)と定性情報(ユーザーの声や現場の実感)の両方が役立ちます。
関連記事: アクセス解析でわかることとは?サイトの改善点をみつける分析ポイント
さらに、競合サイトの分析も見落とせないポイントです。ユーザーが比較検討している他社サイトと比べて、自社サイトの強み・弱みを把握することで、改善方針がより具体的になります。
こうして整理した情報をもとに、リニューアルに必要な条件をまとめていきましょう。これが「要件定義」のフェーズです。ここがしっかりしていれば、制作会社とのやりとりや進行もスムーズになります。
関連記事:【初心者向け】BtoBマーケティング戦略立案と実行の基本ステップ
対策3. RFPを作成し、目的に合ったWeb制作会社を選ぶ
目的と要件が整理できたら、RFP(提案書依頼書)を作成しましょう。プロジェクト概要と目的、提案依頼内容、選考スケジュールや提案方法について記載することで、制作会社との認識のズレを防ぎ、自社に合った具体的な提案を引き出しやすくなります。
また、複数社に依頼する場合でも、同じ条件で比較検討ができるため、選定の判断材料としても役立ちます。Webサイトのリニューアルを成功させるには、目的に合ったパートナーと協力関係を築くことが欠かせません。
サイトリニューアルの進め方や成功事例については、こちらの記事でも詳しく解説しております。ぜひ、参考にしてください。
Webサイトリニューアルのよくある質問【FAQ】
最後に、リニューアルを検討・進行中によく寄せられる質問とそのポイントを、わかりやすく解説します。
Q1. URLは変更してもいいですか?
基本的には問題ありませんが、注意が必要です。
ページのURLが変更されると、これまでの検索エンジンの評価や、ブックマーク・外部リンク経由でアクセスしていたユーザーが正しく新しいページにたどり着けなくなるおそれがあります。
そのため、旧URLから新URLへの「301リダイレクト」設定を必ずおこないましょう。これにより、SEO評価を引き継ぎつつ、ユーザーの離脱も防ぐことができます。
Q2. 古いページは削除しても大丈夫ですか?
慎重に判断する必要があります。
「更新していないから」「デザインが古いから」といった理由だけで、安易にページを削除するのは避けましょう。
特に、検索流入があるページや被リンクを受けているページには、SEO的な価値が残っている可能性があります。
不要な場合も、まずは新しいページにリダイレクトさせるか、内容を更新して活用する方法を検討しましょう。
Q3. CMS・CRM・MAなどのツールは、どれから導入すべき?
自社の課題や状況に応じて、導入の優先順位が異なります。
Webサイトの更新が滞りそうなら、まずはCMSがよいでしょう。顧客情報の管理やフォローアップが課題ならCRM、リード育成や商談化が課題ならMAといったように考えるとよいでしょう。
ただし、それぞれを連携させて活用するには手間もかかるため、CMS・CRM・MAを一体で扱えるHubSpotのようなツールを導入すると、スムーズにマーケティング施策を始められるため、おすすめです。
Q4. リニューアル後、成果がすぐに出ないのはなぜ?
公開直後は、検索エンジン側で新しいサイト構造やコンテンツ内容を再評価する期間が必要なため、アクセス数や検索順位が一時的に変動することがあります。これはごく自然な現象です。
また、サイトのデザインや導線が変わることで、訪問者が目的の情報にたどり着くルートも変化します。その結果、ユーザーの行動が一時的に不安定になり、資料請求やお問い合わせなどの成果につながりにくくなる場合もあります。
こうした理由から、リニューアルの効果が安定するまでには、1〜3ヶ月程度の“調整期間”が必要とされています。あらかじめ社内でもこの点を共有しておくと、短期的な成果に一喜一憂せず、中長期的な改善にしっかり取り組むことができます。
まとめ
Webサイトのリニューアルは、見た目の刷新だけでなく、成果につながる仕組みをつくるプロジェクトです。 目的が曖昧なまま進めたり、SEOやUI、運用体制の見直しを怠ると、期待した効果が得られないこともあります。
検討事項が多く不安もつきものですが、社内で共通認識を持ち、目指す成果に向けて改善を重ねていくことで、Webサイトは「成果を生み出す武器」へと進化します。
私たちタービン・インタラクティブでは、事業拡大に貢献するWeb戦略のご提案、サイト制作、CRMやマーケティングオートメーションの導入支援など多数の実績がございます。
また、成果を出し続けるWebサイトのために、ペルソナ設計からはじめる顧客視点のサイト制作と無理のない運用体制の構築をご支援しております。マーケティング活動の改善や、サイト制作・リニューアルをご検討の際は、ぜひ一度お声がけください。