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HubSpot INBOUND 2025速報:新戦略『Loop Marketing』を支えるAIツール群を徹底解説!

INBOUND 2025の会場様子

日本時間2025年9月4日AM1:30(現地時間2025年9月3日AM9:30)から開催されているHubSpotのフラッグシップイベント「INBOUND 2025」。
今年は会場の都合で、いつものボストンではなくサンフランシスコからお届けします。

目次

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基調講演では、CEOのヤミニ・ランガン氏と製品担当EVPのカレン氏が登壇し、AI時代における企業の新たな成長戦略と、それを実現する革新的なツール群が発表されました。
本記事では、新戦略の核心である『Loop Marketing』と、それを支えるHubSpotの新しいソリューションを解説します。

 

なぜ今、新しい戦略が必要なのか?
ファネルの機能不全と、新戦略「Loop Marketing」

基調講演の冒頭で、ヤミニ・ランガン氏は従来の「ファネル」モデルが機能不全に陥っている現状を指摘しました。顧客の接点はSNSやポッドキャストなど多様なチャネルに分散し、AIが検索結果の答えを直接提示するようになったことで、ウェブサイトへのオーガニック流入は「トラフィック・アポカリプス」と呼ばれるほど激減しています。

この変化に対応するため、HubSpotが提唱したのが『Loop Marketing』です。

HubSpots Loop Marketing Prompt Library

これは直線的なファネルとは異なり、常に学習・進化を続ける動的な成長プレイブックです。Loop Marketingは以下の4つのステップで構成されます。

  1. Express(表現する
    AIを活用する前に、ブランド独自の視点やトーンを明確に定義します。
  2. Tailor(最適化する)
    AIを用いて、顧客一人ひとりに対してパーソナルで文脈に沿ったメッセージを大規模に届けます。
  3. Amplify(増幅する)
    顧客がいる多様なチャネルでコンテンツを展開し、従来のSEOに加えて「AEO(Answer Engine Optimization)」でAI検索の上位表示を目指します。
  4. Evolve(進化する)
    AIを活用して迅速に学び、戦略を継続的に改善します。

「Loop Marketing」を実践する「ハイブリッドチーム」の作り方とHubSpotの新ツール群

基調講演の後半では、カレン氏が登壇し、人間とAIが協働する「ハイブリッドチーム」を構築するための具体的な将来の構想と、それを実現する新機能が発表されました。

ステップ1:データを統合する (Unite Your Data)

ハイブリッドチームの能力は、その基盤となるデータの質に左右されます。HubSpotは、散在し、不完全で、活用しきれていないデータを統合するための強力なソリューションを発表しました。

  • Smart CRM
    これは単なる記録システムではありません。電話の書き起こしやサポートチケット、メールといった非構造化データから、新たな連絡先や担当者の変更、資金調達のニュースなどをAIが自動で抽出し、常に最新の状態に保ちます。これにより、マーケターは「データ探偵」業務から解放され、より創造的な仕事に集中できます。さらに、このSmart CRMは単体で利用可能になりました。
  • Data Hub
    Operations Hubを大幅にアップデートし、改名されたData Hubは、社内外のあらゆるデータを一元管理する場所です。スプレッドシートやデータウェアハウス(Snowflakeなど)に散らばったデータを、ノーコードでHubSpotに接続し、AIが活用できる完全な顧客コンテクストを構築します。
  • データ品質ツール (Data Quality Tools)
    重複データの排除やフォーマットの自動修正、欠落情報の補完などをAIが実行します。これにより、「Dear First Name」のような恥ずかしいミスを防ぎ、キャンペーンの信頼性を高めます。

ステップ2:人材を支援する (Enable Your People)

統一されたデータを基盤に、各担当者が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、AIを搭載したツール群が刷新されました。

  • Marketing Studio
    キャンペーンのアイデアを一つ入力するだけで、AIがターゲット設定からSNS投稿、メールコンテンツまで、マルチチャネル戦略全体を自動で立案する新しい司令塔です。
  • Segments
    従来のリスト作成機能が進化し、「最近の製品ローンチからのウェブサイト訪問者を表示」といった指示を出すだけで、AIがこれまで気づかなかった高意図のオーディエンスを発見してくれます。
  • AI-powered E-mail
    顧客一人ひとりのCRMデータに基づき、完全にパーソナライズされたメール本文を生成し、過去のエンゲージメント履歴から最適な送信タイミングを自動で選択します。この機能の社内テストでは、コンバージョン率が82%向上したとのことです。
  • AEO(AIエンジン最適化)機能
    自社の情報がLLMの生成する「答え」の中に表示されるよう、AIがトピックや改善点を提案し、競合と比較した際の表示スコアも提示してくれます。
  • AI-powered CPQ
    案件の停滞を招く見積もり作成プロセスを劇的に改善します。Smart CRMの文脈からAIが最適な見積もりを自動生成し、電子署名や共有機能も統合されているため、承認から契約までを一つの場所で完結できます。

ステップ3:AIチームを構築する (Build Your AI Team)

ハイブリッドチームの仕上げは、AIをデジタルな「チームメンバー」として組織に組み込むことです。

  • Breeze Assistant
    全従業員をサポートするAIアシスタントです。次の会議の準備を指示すれば、カレンダーを認識し、関連する取引履歴やドキュメントから論点や目的を数秒でまとめてくれます。
  • Breeze Agents
    特定の業務を自律的に実行するデジタルワーカーです。
    • Customer Agent
      Webサイト訪問者への挨拶からリード化、営業担当者のための会議設定まで、顧客対応を24時間体制で行うコンシェルジュです。
    • Data Agent
      「全企業の競合トップ3をリサーチして」といった指示で、ウェブやCRM内の情報を基に調査を行い、データを自動で更新し続けます。
    • Prospecting Agent
      ターゲットリストを渡すだけで、各社の最新動向をリサーチし、個別の状況に合わせた最適なアプローチ戦略を立案・実行します。
  • Breeze Marketplace & Studio
    上記以外にも様々な業務を行うエージェントを「Marketplace」から追加したり、「Studio」で自社の業務に合わせてエージェントの動きを簡単にカスタマイズしたりできます。

まとめ:人間がリードし、AIが加速させる「ハイブリッドチーム」の時代へ

「INBOUND 2025」で示されたのは、AIを恐れるのではなく、最高のパートナーとして共に成長していく未来像でした。私たちの役割は、テイスト、戦略、判断力で「リード」すること。そしてAIの役割は、スピード、規模、実行力でそれを「加速」させることです。

HubSpotが2025年に提供する新しいプレイブックとツール群は、AI時代という大きな変化を乗りこなし、成長を加速させるための強力な羅針盤となるでしょう。

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