Webサイトの第一印象は、情報の「並び方」で決まります。特にBtoB企業向けの場合、訪問者が求めているのは派手さではなく、必要な情報に迷わずたどり着ける安心感と企業としての信頼性です。
その土台となるのが「グリッドデザイン」という考え方です。本記事では、長年愛されるグリッドデザインの普遍的な価値と、多様なデバイスに対応しながら見込み客へ的確に情報を伝えるための実践的な活用ノウハウやトレンドについて詳しく解説します。
目次
グリッドデザインとは何か
グリッドデザインとは、単なるレイアウト手法ではなく「情報設計の考え方」です。画面上に仮想的な縦横のガイドを設定し、その規則に沿って要素を配置する設計思想を指します。
グリッドは、情報の優先順位を視覚的に整理し、ユーザーの視線を自然に導くための「ものさし」の役割を果たします。重要なのは「どの情報を、どの順番で、どの大きさで見せるか」という情報設計そのものです。装飾ではなく、UXを支える設計図だと考えると理解しやすいでしょう。

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BtoBサイトでグリッドデザインを採用する3つのメリット
BtoB企業のWebサイトでは、製品情報や仕様・特徴、導入事例など、扱う情報が多くなりがちです。BtoBの購買行動では複数の企業を比較検討するケースが多いため、必要な情報をすぐに把握できないWebサイトは、内容を十分に確認されないまま離脱されやすくなります。
グリッドデザインを採用することで、見込み客が理解しやすい形へ情報と視線の流れを整理でき、次のようなメリットが生まれます。
1.信頼感を醸成する「一貫性」
BtoBの取引において、企業への信頼感は意思決定の重要なファクターです。Webサイトのデザインが全ページにわたって一定のルールで統制されていると、ユーザーは「細部まで行き届いた、誠実な企業である」という印象を無意識に抱きます。グリッドによる一貫性は、ブランドのプロフェッショナリズムを視覚的に伝える要素の一つです。
2.複雑な情報を整理する「情報の構造化」
BtoB企業のWebサイトの情報は多岐にわたり、かつ専門的です。これらをグリッドを用いて「モジュール化(部品化)」することで、構造的に提示できます。
「重要な情報は広く、補足情報はコンパクトに配置する」など、グリッドを使い分けることで、見込み客は「何が主要なメッセージなのか」を直感的に判断できるようになります。
3.開発・運用の「効率化」
グリッドという共通ルールがあれば、ページ追加や更新時も品質を保ちやすくなります。定義されたグリッドに当てはめるだけで、既存のデザインを崩さずに高品質なページをスピーディに公開できます。
CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)での運用や、複数人での更新体制とも相性が良い設計です。
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知っておきたいグリッドデザインの基本構造
グリッドデザインを理解するうえで重要なのは、情報をどのように整理し、読みやすく伝えるかという設計の考え方です。Webサイトにおけるグリッドは、大きく3つの要素で構成されています。
カラム(Column)
カラムは、コンテンツを配置するための縦の区画です。テキストや画像を、カラム幅をもとに配置を設計することで、情報の並びに一貫性が生まれます。
例えば、主要なメッセージは複数カラムを使って広く見せ、補足情報は狭いカラムに収めるといった設計が可能です。こうした幅の使い分けによって、ユーザーは視線の流れの中で、どの情報が重要かを直感的に理解しやすくなるのです。
ガター(Gutter)
ガターは、カラムとカラムの間に設ける余白で、情報同士を視覚的に区切る役割を持ちます。適切に設計することで、情報の塊が整理され、読み進めやすいレイアウトになります。
特に、製品スペックや機能説明など情報量が多くなりやすいBtoBサイトでは、ガターの設計が可読性や理解度に大きく影響します。
マージン(Margin)
マージンは、レイアウト全体と画面端との間に設ける外側の余白です。要素同士の間隔ではなく、コンテンツ全体を囲む余白として捉えます。
マージンを整えることで、情報のまとまりが保たれ、視線の流れが整理されます。その結果、見込み客が各コンテンツを把握しやすくなります。
グリッドは「並べ方」ではなく「情報設計」
グリッドレイアウトの目的は、情報の優先順位を視覚的に整理することです。例えば、「なぜこの情報を先に見せたいのか。どこまでが主メッセージで、どこからが補足なのか」といった判断を、グリッドという枠組みの中で整理していきます。
その結果、見込み客が欲しい情報を読み取りやすくなり、企業に対しても「信頼できる」という印象が生まれます。
効果的なグリッド設計の実践プロセス
実務において、グリッドデザインを成功させるためのプロセスを紹介します。単に見栄えを整えるだけでなく、情報の重要度を視覚化していく作業です。
1.情報の優先順位付けと「箱」の定義
いきなりグリッドを引く前に、そのページで見込み客に何を一番伝えたいかを明確にします。次に、キャッチコピーや製品写真、導入メリットなどの各要素を「どの程度の大きさの箱(カラム数)に入れるべきか」を検討します。情報の重みに合わせて「箱」のサイズを変えることで、視覚的な強弱が生まれ、読み手に意図が正しく伝わります。
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2.マルチデバイスを想定した「フルード(可変)設計」
現代のWebサイトは、PC、タブレット、スマートフォンといった多様な閲覧環境に合わせて画面幅が常に変化します。これを「フルード(流動的)グリッド」と呼び、いわゆるレスポンシブデザインの根幹となる考え方です。
PCでは「3カラム(横並び)」で配置していた情報を、画面幅の狭いスマートフォンでは「1カラム(縦並び)」に組み替えるといった、柔軟な設計が不可欠です。どの画面サイズでレイアウトを切り替えるか(ブレイクポイント)の判断が、ユーザーの使い心地(UX)の質を左右します。

3.普遍的な美しさを生む「比率」の活用
グリッドで整えた枠組みの中に、人間が本能的に美しいと感じる比率を取り入れることで、デザインの完成度はさらに高まります。
黄金比(約1:1.618)
名刺のサイズにも使われる、世界的に最も安定的で美しいとされる比率です。Webサイトにおいても、メインコンテンツとサイドバーの比率を黄金比に近づけることで、格式高く洗練された印象を演出できます。
白銀比(約1:1.414)
「大和比」とも呼ばれ、日本国内で古くから好まれてきた比率です。ビジネスで使う「A4やA3などの用紙サイズ」がこの比率にあたります。
日本人にとって見慣れたバランスであるため、国内向けのBtoBサイトにおいて、安心感や誠実さを伝えたいデザインに適しています。
これらの比率をグリッドの基準として採用することで、感覚に頼らない「根拠のある美しさ」を備えたWebサイトを構築できます。
グリッドレイアウトを活用したWebサイト事例
グリッドレイアウトの考え方がどのように活用されているか、Webサイト事例で確認します。
事例1.株式会社シー・エス・エス様

株式会社シー・エス・エス様の採用サイトは、「Bento Grid(弁当箱のような区切り)」と呼ばれる構成です。異なるサイズのカード状のコンテンツをパズルのように配置しています。
賑やかさと楽しさを演出しつつ、グリッドの線が揃っているため、雑多な印象を与えず組織のまとまりが感じられる設計です。
事例2.福井鋲螺株式会社様

福井鋲螺株式会社様のグローバルサイトは、「余白(ガターとマージン)」の使い方が特徴的です。12カラムをベースにした可変グリッド設計で、大きなマージン(外側余白)を取ることで高級感を演出しています。「詰め込む」のではなく、グリッドを使って「贅沢に余白を取る」例です。
進化するグリッド:2020年代後半のスタンダード
グリッドデザインの歴史は古いですが、近年のCSS Grid(シーエスエス・グリッド)などの実装技術の普及により、レイアウト表現の幅は広がっています。
フレキシブルなグリッド(CSS Gridの活用)
現在のWeb制作では、情報の優先順位(文書構造)を正しく保ったまま、デバイスごとに最適な配置を自由にコントロールできます。これにより、SEOに最適な正しい文書構造を維持しながら、デバイスごとに自由度の高い配置を作り上げることが可能になりました。
例えば、PCでは情報を左右にダイナミックに配置し、スマートフォンではユーザーが読みやすい順序に整理し直すといった「見込み客のストレスを減らす最適化」がスムーズに実現します。
こうした柔軟な設計は、Webサイト内での「情報の強調」にも役立ちます。あえて要素を少し重ねたり、グリッドの枠を意図的にはみ出させたりする手法も、基本となるルールがあるからこそ、その「変化」が効果的なアクセントとして機能します。規則性の中にほどよい変化を加えることで、見込み客の視線を重要な箇所へ自然に導き、企業の信頼性と新鮮な印象を両立したサイト作りが実現します。
アクセシビリティと視認性の向上
グリッドデザインは、情報の読み取りやすさ(アクセシビリティ)を支える役割も担います。情報の優先順位が整理されていると、画面を拡大して閲覧する際にもレイアウトが崩れにくく、どのような環境でも意図したとおりの順序で情報を届けられます。
また、年齢を問わず読み取りやすいフォントサイズや行間を規則性の中に組み込むことで、Webサイト全体の視認性が向上します。見込み客にとって「使いやすく、読みやすいWebサイト」であることは、情報の取りこぼしを防ぎ、結果として検討度合いを高めることにもつながります。
まとめ
グリッドデザインは、クリエイティビティを制限するものではありません。むしろ、明確なルール(秩序)があるからこそ、その中での強調や変化が際立ち、見込み客の心に届くデザインが可能になります。
特に、情報の正確性と信頼性が求められるBtoB企業のWebサイトにおいて、グリッドは企業の姿勢を体現する重要な要素です。もし自社のWebサイトが「どこか雑然としている」「情報が探しにくい」と感じるようであれば、情報の整理・設計を見直すことをおすすめします。
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