第30回:09年のネットトレンドを振り返る

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年12月31日

未曾有の不況が吹き荒れた2009年。

Webを活用したマーケティングやビジネスも大きく変化しました。09年最終の今回は、今年話題になった2つのキーワードで、1年を振り返ってみたいと思います。

【クラウドコンピューティング】
09年はSaaS(ソフトウェア アズ ア サービス)という考え方が普及した年でした。クラウドコンピューティングは「ソフトウェアやデータを手元のコンピューターに置くのではなく、(雲の中のような)インターネットの向こう側に置く」という考え方やサービスを指します。インフラやシステムを利用者単位の月額費用で手軽に運用でき、投資リスクが少ないことからも注目を集めました。「システムは所有から利用へ」の流れが加速し、システム構築のスピードとコストが激変した1年だったといえるでしょう。実務でもクラウド関連のお問い合わせは増加傾向で、講演のテーマに要望されるケースも増えました。セールスフォース・ドットコム社主催のイベントで講演させていただいた「クラウドのマーケティング活用事例」は実に1000人をこえるお申込があり、企業担当者のクラウドへの関心の高さを実感したのものです。

【ツイッターのブレイク】
「いまなにしてる?」という質問にこたえるかたちで短いテキストを投稿するミニブログサービスが伸びました。気軽に素早く投稿できるのが特徴で、ユーザー同士が「リアルタイムに、ゆるやかに」つながる機能を持つ「ツイッター」。アメリカ大統領選挙、イラン大統領総選の抗議活動で活用されたことが話題になり、日本でも爆発的にユーザーが増加しています。モバツイッターなど、日本の携帯環境で活用できるインフラや、専用のiphoneアプリが、利用スタイルにピッタリはまったことなども大きな理由でしょう。企業と消費者の関係性を緊密にする上、安価なマーケティングツールであることから期待と注目を集めました。また、マイクロソフトやグーグルとの提携も発表され、検索エンジンにリアルタイムな情報が流れ込む事が予想されています。

2009年、変化し続けるWeb環境は、消費者の行動様式、ビジネスモデルの両面に大きな影響を与えました。

今年のトレンドは、「新しい発想で、コストダウンを実現しながら、実質の価値を高め、効果を上げる。」というリアルな要望だったのかもしれません。

不況が続く中部地区ですが、Web活用で光が差し込む余地はまだまだ残されていると信じています。さて、2010年はどのような戦略を描きましょうか。

(2009/12/30 中部経済新聞掲載)

第29回:メッセンジャーを活用

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年12月24日

「A:なるほどね。ちょっと込み入ってきたので、この流れで打合せにしましょう。5分後いける?」
「B:了解です」
「C:かしこまりました」
「D:会議室押さえました」
「E:資料プリントします」

これは、ウチの会社でよく見られる風景。しかし、実際には誰も話しているわけではありません。全てのスタッフによるリアルタイムな情報交換、インターネットメッセンジャーの画面上の会話です。2枚のディスプレイの一部に常時開いている会話用のウィンドウで、必要に応じてメッセージを送り合っています。

ビジネスの基本は「報・連・相」といいますが、スピードが求められる今の時代、情報共有のためにいちいち会議を開いていたのでは間に合わないことばかり。必要なメンバー間での情報共有は、作業を進行しながら行いたいものです。

より多くの社内情報の流れを最小限の時間と手間で把握するための工夫として、メッセンジャーは革新的な効果をもたらします。関係情報を横目で見ながら作業を続けられますし、「了解です!」を送信するのに1.5秒もかかりません。

話をしなくなって、社内コミュニケーションが悪くなるんじゃないか。と心配されることもありますが、むしろ良く事の方が多いと感じます。例えば、上司とのコミュニケーション。部長のデスクにうやうやしくお邪魔して「今、お時間よろしいでしょうか?」声をかけるタイミングをとるのは難しいものです。メッセンジャーであれば、上司の作業を中断させてしまう心配もありません。緊急性に応じて、上司側で優先順位をつけてもらえばいいのです。

出張時や外出時にもとても便利。モバイル環境が整った現在では、どこにいてもメッセンジャーに参加することができます。

「A:書類こちらで預かってました、お持ちしましょうか?」
「私:無理でしょ、今新幹線だもの。メールしてよ」
「A:なんだ、席にいらっしゃるのかとw」
同じフロアで仕事をしているのと変わりません。

話した履歴が残せるのも、物忘れがひどくなった世代には朗報。メールの正確さや記録性と、会話のスピードをあわせもつメッセンジャーは、新しい「会話」や「議論」の方法論といえます。

社内共有しているファイルの場所を送信したり、参照すべきWeb情報のURLを送信する、といった作業にかかる時間も全社で考えると馬鹿に出来ないもの。無駄な時間やストレスは減らして、クリエイティブな作業に集中できる環境は、企業競争力につながるでしょう。

「メッセンジャーは友達同士のコミュニケーション」という固定観念を捨て、ビジネス活用を考えてみてはいかがでしょうか。

(2009/12/23 中部経済新聞掲載)

第28回:Webリテラシー

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年12月17日

「読み書き算盤、インターネット」

15年前、広告会社で働いていたころに私の上司がよく使っていた言葉です。算盤(そろばん)といわれても、若い方にはピンと来ないかもしれませんね。電子計算機が登場するまでは、王者の座に君臨していた四則演算の最強ツール。私が子供のころにはまだまだポピュラーな習い事でしたから、多少の覚えもありますが、それでも算盤とインターネットを並べられると、当時はなんだか可笑しく聞こえたのを憶えています。

しかしながら「これからのビジネスには「読み書き算盤」つまり「読解、筆記、計算」に「情報検索やツールの活用技術」を加えた4つの基本能力が必要だよ。」というこのメッセージは、とても重要なものでした。

現在では「Webリテラシー」とよばれる、この4つめの必須能力の重要性を、幅広い年代に伝えるための表現だったわけです。さすがは広告会社の部長と、今更ながらに感心したりします。

Webリテラシーは「情報について理解・整理し、活用するために、インターネットを活用する能力」と表現できそうです。

しかし、企業のWeb担当者ともなれば、一般レベルより高いWebリテラシーが求められます。ユーザーとして活用するためだけでなく、ユーザーが利用するためのWebサイトを運営するのですから、当然といえば当然ですね。

1.「複数のチラシを見比べながら、賢く買い物をする能力の高い主婦に必要なリテラシー」が身についてはじめて
2.「見比べられた上で、主婦が殺到するチラシをつくる能力の高い担当者に必要なリテラシー」にトライすることができるようになるのです。

実際の現場では、若い担当者の「インターネットは苦手で」という言葉に、実に高い確率で出会います。学生時代からネットを活用して勉強し、Webやメールを活用して友人関係や恋愛関係を築いてきた世代は1.のリテラシーは高いのですが、当たり前のものであるだけに、2.のリテラシー、意識的に作り手側の立場で仕組みを考えることが苦手のようです。

企業情報の発信者として勉強しなくてはいけないことは、今も昔も変わりません。多くの一般ユーザーが情報発信する現在では、むしろ勉強すべき内容は種類も多く、アップデートが早いのです。

お客様に喜んでもらうために磨き続ける「マーケティング」や「クリエイティブ」「システム」に関する知識。「現代Web担当者の読み書きそろばん」であることは、間違いなさそうです。

(2009/12/16 中部経済新聞掲載)

第27回:悪い評価は伝わらない

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年12月10日

「サイレントマジョリティー」

Webサイトのユーザーを、こう呼ぶことがあります。実際の接客と違い、Webサイトは基本セルフサービスのメディアで、お客様が積極的にクレームを下さることが少ないという意味です。「良い評価」は結果としてカウントされますが、無言で去っていくお客様の「悪い評価」は情報として伝わりづらいのです。

例えば、スーパーや小売店で、レジまで来たお客様の3人に1人が買い物カゴをその場において立ち去っていたら大変なことですね。レジのスタッフにヒアリングをしたり、お店から出て行くお客様に理由を聞いて、必死で改善策を模索するでしょう。しかし、Webサイトのお客様は「なぜ、最後まで入力フォームのステップを完了しなかったのか」、その理由を教えてはくれません。何故最後まで記入してくれなかったのですか?という入力フォームを設置するというのは、それこそナンセンスです。

しかし、何も教えてはくれないお客様であっても、Web上でのアクションを観察することから問題点を探すことはできます。Webサイトの可用性は、お客様と企業のコミュニケーションを可視可できること。お客様の行動自体をメッセージとして分析する企業努力は可能なのです。

例えば、フォーム毎に「誤入力率」や「入力にかかる時間」などを測定し、ユーザーにかかるストレスを分析する手法があります。どの項目で記入ミスが多く発生してしまうのか、どの項目は記入するのに多くの検討を必要とするのかなどを、統計的なデータとして分析することで、接客方法のレベルアップを検討するのです。

入力フォームの内容や項目数を考えるときは、「お客様のお手数」と「社内の利便性」がトレードオフの関係になることを念頭に置きましょう。初期段階で本当に自社にとって必要な情報なのか、後からお客様にお聞きするフローは存在しないのかをよく検討し、初期段階でのストレスをできる限り少なくすることが重要です。

もちろん、個人情報の取扱いポリシーの提示タイミングなど、企業の姿勢を誠実に示し、問い合わせをしようとしているユーザーの心理的なハードルを下げる努力が必要であることもいうまでもありません。

お客様の反応を見ながら、少しづつ調整することで、企業・サービスごとに最適なバランスを模索することが、問い合わせ数のアップ、コンバージョンの向上につながるのです。

(2009/12/09 中部経済新聞掲載)

第26回:入力フォームのわな

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年12月3日

「Webサイト上のコンバージョンを向上したい。」

企業が運営するWebサイトには必ず目的が存在します。昨今、設定されるゴールとして最も多いのは「コンバージョン」つまり顧客転換率のの向上です。

具体的には「商品購入」「会員登録」「見積依頼」「資料請求」「サンプル請求」「問い合わせ」などの直接成果にあたりますが、これらの成果を上げるための「Webサイト上の最後の難関」といえば、やはり入力フォームでしょう。

Webサイトは基本的にセルフサービスのメディアですから、上記のような成果を上げるためには、お客様自らのお手数で入力フォームへの記入をしていただく必要があります。

お名前、ふりがな、企業名、部署名、郵便番号や住所、電話番号やファックス番号、メールアドレスといった基本情報の他に、お問い合わせ内容の文章、企業規模、認知媒体や、製品導入後の利用用途などなど、実に様々な入力をいただかなくてはなりません。

本来であれば自社の営業マンがお聞きするべき作業を、お客様に代行していただいていると考えれば、できる限り気を遣って設計すべきところですが、実際の入力フォームには不親切なもの、時には失礼なものも多く存在し、提供している企業の姿勢を疑ってしまうような場合もあります。

大量の情報を入力させられた上、確認画面に移った瞬間に「※電話番号は半角数字で記入してください。」「※メールアドレスの形式が間違っています。」「※ご要望は200文字以内で記入して下さい。」「※生年月日はyymmddの形式で入力してください」と大きな赤文字でびっしり注意され、問い合わせする気も失せてしまう・・・

そんな経験のある方は少なくないでしょう。

頑張って一通りの修正を終えて「次へ」のボタンを押したつもりが、実は「リセット」のボタン。今までの苦労が水の泡になってしまい、まるで罠にかかったようです。なんで、こんなボタンがあるのか分かりません。もう一度頑張って記入すると、住所欄に書いた「桜通大津KTビル6F」に「※住所は全角で記入してください」のコメント。反省しながらどこが半角だったか書き直したりしているうちに、もう少し接客のいい店に移ろうかと考えてしまいます。

御社Webサイト、入力フォームからの離脱率は大丈夫でしょうか?まずはWebのご担当者以外の方に協力をいただき、お客様の気持ちでの問い合わせをしてもらいましょう。

(2009/12/02 中部経済新聞掲載)

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