第27回:悪い評価は伝わらない

2009年12月10日

「サイレントマジョリティー」

Webサイトのユーザーを、こう呼ぶことがあります。実際の接客と違い、Webサイトは基本セルフサービスのメディアで、お客様が積極的にクレームを下さることが少ないという意味です。「良い評価」は結果としてカウントされますが、無言で去っていくお客様の「悪い評価」は情報として伝わりづらいのです。

例えば、スーパーや小売店で、レジまで来たお客様の3人に1人が買い物カゴをその場において立ち去っていたら大変なことですね。レジのスタッフにヒアリングをしたり、お店から出て行くお客様に理由を聞いて、必死で改善策を模索するでしょう。しかし、Webサイトのお客様は「なぜ、最後まで入力フォームのステップを完了しなかったのか」、その理由を教えてはくれません。何故最後まで記入してくれなかったのですか?という入力フォームを設置するというのは、それこそナンセンスです。

しかし、何も教えてはくれないお客様であっても、Web上でのアクションを観察することから問題点を探すことはできます。Webサイトの可用性は、お客様と企業のコミュニケーションを可視可できること。お客様の行動自体をメッセージとして分析する企業努力は可能なのです。

例えば、フォーム毎に「誤入力率」や「入力にかかる時間」などを測定し、ユーザーにかかるストレスを分析する手法があります。どの項目で記入ミスが多く発生してしまうのか、どの項目は記入するのに多くの検討を必要とするのかなどを、統計的なデータとして分析することで、接客方法のレベルアップを検討するのです。

入力フォームの内容や項目数を考えるときは、「お客様のお手数」と「社内の利便性」がトレードオフの関係になることを念頭に置きましょう。初期段階で本当に自社にとって必要な情報なのか、後からお客様にお聞きするフローは存在しないのかをよく検討し、初期段階でのストレスをできる限り少なくすることが重要です。

もちろん、個人情報の取扱いポリシーの提示タイミングなど、企業の姿勢を誠実に示し、問い合わせをしようとしているユーザーの心理的なハードルを下げる努力が必要であることもいうまでもありません。

お客様の反応を見ながら、少しづつ調整することで、企業・サービスごとに最適なバランスを模索することが、問い合わせ数のアップ、コンバージョンの向上につながるのです。

(2009/12/09 中部経済新聞掲載)

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