第16回:マーケティングと営業の連携

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年9月24日

「新たな顧客と出会いたい。」

長引く不況の中、多くの企業が求めているのが新規顧客の創造です。これまで、大手メーカーや有力な代理店など、特定の顧客を中心に事業を展開してきた企業ほど、このテーマは重要かつ難しい課題となっています。

Web戦略の現場でも、ここ数年「コンバージョン」と言う言葉が飛び交うようになりました。コンバージョンとは、「顧客への転換」を意味する言葉で、BtoCであれば購入、予約、カタログ請求、BtoBであれば見積依頼、資料請求、お問い合わせなど、顧客になるステップを踏んでもらうことを指します。

コンバージョンを獲得するため、
1.アクセスの状況やページの閲覧履歴からユーザー心理を分析したWebサイトの改善、
2.広告効果を測定して要件にあう広告媒体や誘導方法の比較検討・出稿
などの「Webマーケティング」も、多くの企業で積極的に取り組まれるようになりました。

しかし、実際はこのような努力が「ある理由」で結果につながらないケースが多いことをご存じでしょうか。それが「マーケティングと営業活動の分断」です。

私たちが現場でよく耳にする事例としては、マーケティング部署が必死で集めた「見込顧客」(コンバージョン)を、営業が「ありがたくない客(見込みの薄い客)」と見なし放置してしまうというケースです。

このような場合、潜在顧客を獲得するまでは実に科学的に作業しているにもかかわらず、その後の潜在顧客への対応方法や使用するツール、獲得目標の設定やその管理・改善方法についての「営業設計」ができていないことが原因であることが多いのです。

先日、クラウドフォース・ジャパン2009というクラウドコンピューティングのイベントで、今回のテーマである「マーケティングと営業の連携」について講演をさせていただく機会がありました。全体で6000人、私が担当させていただいたセッションだけでも1000人を越える参加申し込みがあり、Webを活用した営業活動の効率化、とりわけマーケティングと営業の連携に多くの関心が集まっていることを実感いたしました。

「WebマーケティングとWeb営業」は間違いなく、これからの企業活動を考えるキーワードです。ライバル企業に先を越されるその前に、全社的に取り組みをされてはいかがでしょうか。

(2009/09/23 中部経済新聞掲載)

第15回:Web戦略が課題にできないワケ

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年9月17日

広告マーケティングと企業のWeb戦略に取り組んで15年。

ネット社会の進行とともに、企業のコミュニケーション環境が大きく変化するのを目の当たりにしてきました。3ヶ月前が懐かしく感じるほどに、変化が激しいのがITで加速するコミュニケーションの領域。しかしそんな中でも、頑固に変らないことがあります。それは、「経営層のインターネットに対する課題認識」。担当部署のご苦労が、正しく理解されないという場面にも何度か遭遇したものです。

理由はシンプル。

一般的に経営者には、多くの経験を積まれた50代以上の方が多いからです。優秀なベテラン経営者には、効果的な情報取得や情報共有を伝統的な方法(メディア、専門書、人的ネットワーク等)で高度に習慣化されている方が多く、Webという「セルフサービス」の傾向が強いサービスをわざわざ利用する必要性が少ないのだと考察しています。

しかし、お客様の気持ちがわからなくては、サービス提供側としての判断などできるはずがありません。そこで、ベテラン経営者の皆様には、積極的にWebサービスをご利用くださるようお勧めしています。

ナイキのスニーカーをオンラインショップでオーダーすれば、自分で「デザイン」したオリジナルカラーのスニーカーが2週間足らずで海外の工場から直送されます。どんなシステムと生産ラインで実現しているのかと、思いをはせずにはいられないはずです。

Facebookのアカウントを開設し、遠方や海外に住む旧友を検索して「友達」に登録すれば、彼らの日々の活動や気分が知るともなくわかるようになります。あえて連絡を取り合わなくても数十年のブランクが解消していく感覚には驚きを感じるでしょう。ヤフオクで何か販売してみる、ITMSで音楽を購入してみる、携帯でゲームをダウンロードしてみる・・・「高校生じゃないんだから」と恥ずかしがらずにやってみてくださいとお願いします。

もちろん、、自社のWebサービスを体験していないなど言語道断。自社サイトやブログ、メルマがはもちろん、商品やサービスを購入できるネットショップがあれば、実際に購入して、ユーザー目線でサービスの質を感じることが重要です。

「Webサイト活用は重要な企業課題の1つ」という言葉に実感のない経営層の方は要注意。お取引先やエンドユーザーや社員の皆さんが日常的に使っているWebサービスなるもの、体験しなくては見えないこともあるのです。

(2009/09/16 中部経済新聞掲載)

第14回:Webサイトは企業を映す鏡

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年9月10日

企業のWebサイトはその性格上、多様なステークホルダーに向けて公開されます。

顧客や潜在顧客はもちろん、発注先の企業、競合関係にある企業、公開企業であれば株主や投資家、採用情報であれば、入社希望の学生やキャリア等等、立場も目的も異なる多様な人々が訪れます。顧客に自社サービスの素材やクオリティの高さをアピールしながら、株主には自社サービスの利益率の高さや原価の低さを解説するという反対の仕事を、同じ場所でしなくてはいけない場合もあります。

また、Webサイトはユーザーが企業に関する経験を得られる重要なコンタクトポイントであることも忘れてはいけません。

可能であれば、あなたの会社のサイトの月間来訪者数を聞いてみてください。おそらく、「実際に」来社されたり、営業マンと接触される方の人数より2-3桁以上多いことに気づくでしょう。つまり、圧倒的に多くの方が、Webサイトのみを接点として、あなたの会社を理解し、感じているのです。

企業が責任を持って公開しているWebサイトは、その企業そのものと捉えられるのが自然です。ユーザーは、液晶画面に競合企業のサイトを並べ、そのコピーやデザイン、トーン&マナーやおもてなしのスタイルで企業やサービスを見比べています。

サイト内でのメッセージの一貫性、ユーザビリティーや、コンテンツのクオリティ、ボリュームなどはブランドイメージに直結する要素です。お客様目線で、もう一度チェックしてみましょう。

チェックにあたっては、最も重要なサイト訪問者である「社員のみなさん」の意見も重要です。企業規模によっても異なりますが、社内からのアクセスは全体のアクセスの数%から、10%ほどを担っている場合が多いもの。自分が勤務している企業が世の中に対して発信しているメッセージは社員にとっても重要なのです。

それぞれの現場での実際や要望が、正しいスタイルで発信されるためには、社内から適切に情報が集まる流れが必要となります。そのためには、Webサイトを「2次的な作業」と捉えるのではなく、通常業務の中でも、Webサイトというチャネルを意識する事、「Webサイト経由の多くの人々をイメージする事」が大切です。

「Webサイトは企業の品格を映す鏡」
各領域の担当者の意識を高め、企業としてのバランスのとれたコミュニケーションを心がけたいものですね。

(2009/09/09 中部経済新聞掲載)

第13回:「AIDMA」から「AISAS」へ

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年9月3日

15年前には、いろいろと欲しいものがありました。

よりスペックの高いもの、より便利なものを手に入れることで、生活が豊かになると考えられていたころの話です。現在はどうでしょう。景気が悪い、給料が安いといっても、実は消費者は何でも持っています。TV,デジカメ、PC、ケータイ、MP3プレイヤー、エアコン、自転車・・・・。モノは溢れ、新しいモノを購入することを目標にがんばる人も少なくなっているように思います。モノが売れない時代といわれる所以です。

15年前、広告会社のマーケティング担当見習いとなった私が最初に教わったのは「AIDMAの法則」でした。

消費者がある商品と出会い、購入に至るまでに
Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(購入)
の段階があり、広告を作る側は、この段階を意識して設計する必要があるという、とても有名な法則。実は1920年代に提唱されたものだったそうです。

約80年を経て、新たな購買行動のモデルとして、電通によりAISAS(アイサス)が提示されました。
Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(購入)→Share(共有)
となっており、「欲求」の代わりに「検索」が登場、「記憶」はスキップして「購入」「共有」と続くのが特徴です。

長く長く続いた購買行動はインターネットの出現によって大きく変化、「情報共有」による「スピード化」が進行したのです。

そして、ネット上で「共有」される情報を、また誰かが「検索」して「購入」するという流れが定着すると、AIDMA時代に存在していた「Memory(記憶)」という工程の必要が少なくなりました。

少しずつ情報を「記憶」して判断を進めていくのではなく、ネットで一気に情報を集めて結論を出すスタイル。よほど大きな決断でない限り「1年にわたって購入検討を続ける」というケースは減ってきているようです。

モノが溢れる時代。

購入する理由はどんどん少なくなり、購入検討時期はどんどん短くなる傾向にあります。その貴重なチャンスである、「ネット上での出会い」を、いかに効果的に実現するかが重要な鍵であることは言うまでもありません。

メーカーやサービス提供者には、「消費者の要求に最も近いタイミング」で、「必要十分な情報」を提供するための、独自のノウハウが必要となっているのです。

(2009/09/02 中部経済新聞掲載)

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