第08回:アドネットワーク

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年7月30日

「なんだか最近、赤いヴィッツが増えたわよねぇ。」

クルマにあまり興味のなかった女性がこんなことを言い出したら、かなり高い割合で、本人か周りの人が赤いヴィッツを購入していたりします。「関与度」が高くなることで、今まで見過ごしてきたものが意識されるというのは人間の正しい反応だそうです。

同じように、自宅の改装を考えている人の目には、新聞に折り込まれるリフォームのチラシ広告が飛び込んでくるものです。

さて、それでは、インターネット広告の場合はどうでしょう?「リフォームのバナー広告が増えた気がする」という場合、実は、「本当に増えている」ことが多いのです。

インターネット広告は、物理的な制限をうけません。質量や面積をもっていませんから、ユーザの画面に表示される直前で「差し替える」ことができます。そんな特性を活かして、できるだけ消費者の関与度の高い広告を配信しようとするテクノロジーが、進化してきたのです。

それが、「アドネットワーク」。複数のWebサイト上の広告枠を束ね、まとめて広告を配信するシステムのことです。

インターネットでは、大小様々なWebサイトやブログなどが、広告メディアになることができます。しかしながら、巨大なアクセスを集める一部のサイト以外は、自社の広告枠だけでは営業が難しく、効率的な運営のためのシステムを持つこともできませんでした。

アドネットワークは、そのような「小さなメディア」を束ね、広告メディアとしての力を大きくすると同時に、より目的にあった運用ができるよう開発されました。ちょうど、様々な銘柄の債権をポートフォリオで運用するファンドのような感覚、といえばわかりやすいでしょうか?

配信される広告は、専用のアドサーバから配信されます。媒体(サイト運営者)側はアドネットワークから配信される広告を表示するために、ページの中に「タグ」とよばれる文字ソースを貼りつけるだけ。広告の内容や表示回数などは全て、タグで呼び出されたアドサーバでコントロールされます。

このアドサーバこそが、「今のあなたにぴったりの広告」を配信する仕掛けそのもの。アクセスしたユーザーの、「行動履歴」、「アクセスエリア」、「ユーザー属性」などを活用した「ターゲティング広告」をより効率的に行うための仕掛けなのです。

では、どのようにして「改装に興味のある人」に「リフォームの広告」が届くのでしょう?そのメカニズムについては、次回ご紹介いたします。(次回につづく)

(2009/07/29 中部経済新聞掲載)

第07回:「WiMAX」サービス2

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年7月23日

前回は7月1日にスタートしたデータ通信サービス「UQ WiMAX」をご紹介しました。

モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)は、室内で使用されている無線LAN(IEEE 802.11系)の技術と兄弟関係にある、無線MAN(Metropolitan Area Network)の規格。「すごく遠くまで電波が届く無線LANのようなもの」とご説明しました。

それでは、次世代モバイル環境が生み出す、新サービスの可能性やビジネスインパクトとは、どのようなものでしょう?

キーワードは「2つのオープン化」です。

WiMAXは、多くのメーカーから搭載端末の発売ができるよう、規格をオープンにしています。無線LAN搭載のPCやゲーム機などをイメージしていただく分かりやすいでしょう。メーカーや端末カテゴリをこえて、簡単に接続ができますよね。

これが1つめ、「端末のオープン化」です。また、Wimaxでは「仮想通信事業者(MVNO)」として接続サービスにも参入が可能。さまざまな業種業界から、それぞれの強みを活かした通信サービスの登場が期待されています。2つめは「ネットワークのオープン化」という訳です。

では、端末とネットワークがセットでオープン化するとどうなるでしょう?

「エレベータや空調などの監視システム」、「次世代カーナビ」、「映像広告ディスプレイ」、「ポータブル情報家電」など、専用端末と通信機能が組み合わさった新しいサービスがシンプルに実現しそうです。

ユーザーの行動も、大きく変化するでしょう。

例えば、街中どこからでもユーザ同士がつながる携帯ゲームでは、ますますコミュニケーション機能が充実しそうです。撮影データがそのままアップできる動画デジカメが登場すれば、撮影結果はは手元でなく、常にYoutubeで保存して・共有するスタイルに。誰の所有物かという意識がなくなるかもしれません。

データをネットからダウンロードしながら聞くことを前提にした音楽プレーヤーやサービスはどうでしょう。おっと、これはまるでラジオですね。バスの待ち時間に見られる番組は、ワンセグTVよりもネット映像という事になりそうな気もします。

「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」がネットワークにつながるユビキタス社会の到来。社会インフラの進化とユーザーの行動様式の変化を想定し、いち早く顧客ニーズに応える、各企業独自のネット戦略が必要なのです。

(2009/07/22 中部経済新聞掲載)

第06回:「WiMAX」サービス1

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年7月16日

モバイルがわからなくなってきました。

といっても、「最近のケータイは難しくて使いこなせない!」という話ではありません。「モバイルの概念を整理する」必要があると思ったのです。

7月1日、データ通信サービス「UQ WiMAX」がいよいよサービスを開始、中部圏でも利用できるようになりました。WiMAXは「IEEE 802.16e」と呼ばれる技術による、屋外でのインターネット接続サービスの仕様。現在の3G携帯電話データの通信速度である最高7.2Mビット/秒にくらべ、理論値で40Mビット/秒と、より高速なモバイル通信環境として注目されています。

これだけお話すると単に「モバイル接続サービスが速くなった」という印象ですが、重要なポイントは別にあります。今回登場した「UQ WiMAX」、実は「ケータイ事業者による新しいネット接続サービス」ではありません。

ところで、「IEEE 802.」といえば、聞き覚えがある方はいらっしゃるでしょうか?「IEEE802.」はネットワークに関する標準規格。IEEE 802.11といえば、みなさんのオフィスやご自宅にある「無線LAN」の規格ですね。ノートPCをはじめ、iPhoneをはじめとする通信端末、WiiやNintendo DSi、PlayStation3やPSPなどのゲーム機、プリンターやデジカメ、ポータブルミュージックプレーヤーなど、今では様々なデバイスがIEEE 802.11の無線LANでつながっています。

モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)は、この無線LAN(Local Area Network)の技術と兄弟関係にある無線MAN(Metropolitan Area Network)の規格。少し乱暴に言ってしまうと「すごく遠くまで電波が届く無線LANのようなもの」です。「ケータイで電話をかけてネットにつないでもらう」のではなく、「街じゅうに電波が届く無線LANのオバケに直接つなぐ」サービスだと言えるのです。

「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」がネットワークにつながることで様々なサービスが提供され、人々の生活をより豊かにする。いわゆる「ユビキタス社会」のイメージにより近づいたように思います。

さて、次世代モバイル環境が生み出す、新サービスの可能性やビジネスインパクトとはどのようなものでしょうか?(次回に続く)

(2009/07/15 中部経済新聞掲載)

第05回:クラウド化によるビジネススタイル変化

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年7月8日

「雲の中でおしごと」・・・といってもファンタジーではありません。

「クラウドコンピューティング」という言葉をご存知でしょうか?IT業界では今もっとも旬なキーワード。生活やビジネスのスタイルを大きく変化させている現象です。「クラウド」とは雲。クラウドコンピューティングは「ソフトウェアやデータを手元のコンピューターに置くのではなく、(雲の中のような)インターネットの向こう側に置く」という考え方を指します。

ピンと来ませんか?例えばGoogleやYahoo!が提供するメールサービスをイメージしてください。ネットを使えばどこからでも利用できるこのようなサービスでは、みなさんのPCに専用ソフトやメールのデータを置く必要はありませんね。インターネット経由で「雲の中」にあるサーバ群にアクセスし、その中のソフトを使って、自分宛てのメールを読み、返信しているのです。

メールだけでなく、「文書作成」、「表計算」、「プレゼン作成」や「スケジュール管理」さらには「画像編集」といった多くの機能が、雲の中に用意され、無料、または非常に安価に利用できるようになっています。

最近流行している小型で低価格のPC、「UMPC(ウルトラモバイルPC)」は「ネットブック」とも呼ばれています。このカテゴリでは「データやソフトを置くためのハードディスクは小さいが、ネット接続のための無線LANは標準装備」とういうのがお約束。「雲の中のサービス」を活用するスタイルが前提となっているから「ネットブック」という訳です。なるほど、クラウドな世の中が進行していることを感じさせるますね。

ちなみにこの原稿も、Googleが提供するGoogle docsで執筆中。オフィスのPCより、寝室のネットブックが活躍することが多いこの作業とはとても相性がいいのです。

さて、企業の取り組みも同様です。本格的に導入するには数千万円単位の投資が必要だったCRM(顧客関係マネージメント)やSFA(営業管理)といった領域も、クラウド化することで、1人あたりわずかな金額で「レンタル」できようになりました。

小規模のチームですぐに運用がスタートできる支援システムの存在は、戦略の自由度を飛躍的に向上します。「必要なクラウドサービスを組み合わせ、目的にあわせて活用する」ノウハウは、企業が勝ち抜くための重要な鍵といえるでしょう。

(2009/07/08 中部経済新聞掲載)

第04回:フリーダイヤルは誰が鳴らす?

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年7月1日

「♪0120?000の×××?♪」覚えやすいメロディーでフリーダイヤルを歌い上げる。

TVCMの常套手段だったこの手法も、以前ほど直接的な効果が出ないようです。ある企業の広報担当者に聞いた話では、TVで歌われている電話番号より、ホームページに記載されている電話番号へのお申し込みの方が多くなる傾向にあるとの事。電話をするならホームページは関係ないのではと思われるかもしれませんが、そうでしょうか?ちょっと考えて見ましょう。

実際にニーズが発生したとき、あなたならどうしますか?

1)記憶を頼りに、まずは電話してみる。
2)ホームページでサービスの内容などを確認してから、電話をする。
3)ホームページでサービスの内容などを確認してから、そのままインターネットで申し込みをする。

サービスの種類にもよりますが、今やほとんどの方が、2)か3)の行動をとられるのではないでしょうか。

実際、マス広告の現場でも、ホームページやケータイサイトで情報を補完してもらうことを前提にコミュニケーションが設計されるようになりました。TVCMに、歌の代わりに検索窓が表示されるようになっているのは、みなさんご存知のとおりです。

一般的になった「○○○で検索」というテロップ。重要なのは、顧客が覚えやすいキーワードを選定すること、さらに、顧客がそのキーワードで検索した際、簡単に見つけられることです。競合の多いキーワードを使用してしまっては、検索エンジンで上位表示されるための作業(SEO)に多くのコストがかかったり、せっかくの顧客をライバル企業へ誘導してしまうといった結果にもなりかねません。他にも、景品表示法や薬事法への配慮や、ブランドイメージとのギャップ調整など、クリアすべきハードルもあります。

フリーダイヤルの語呂合わせがそうであったように、このキーワード選定のセンスは、これからの集客効果を大きく左右するでしょう。

マスで認知し、電話で問い合わせるお客様にこそ、ホームページは手を抜けないのです。

電話するタイミングでの十分な事前情報はあるか?背中を押してくれるきっかけはあるか?不安を取り除くための気遣いはどうか・・・?お客様視点で、お電話をくださるお客様の「本当のストーリー」を見てみることをおすすめします。

(2009/07/01 中部経済新聞掲載)

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