第11回:リターゲティング広告

2009年8月20日

皆さんは、ネットで新しい商品やサービスを探す時、そのアクセスの間に注文や問い合わせを完了してしまいますか?

それとも、ある程度目星を付けたら後日また新たに検索をするでしょうか。実際には、商品が高額になるほど、またBtoBでの領域になるほど、検討作業の回数や期間は長くなる傾向にあります。意志決定までの間、ユーザーはネット上での情報収集を繰り返しますが、訪れた複数のサイトから最終的にに1つを絞り込む課程では、再来訪の回数が多い方が当然有利。サイト運営側としては、是非ともこの関与度の高いユーザーに再訪問してほしいところです。

このような状況で効果を発揮するのが、「リターゲティング広告」。

1.サイトやネットショップを訪れた事のあるユーザーを識別し
2.そのユーザー向けに、(広告ネットワーク上の)他のサイト内で再来訪を促すバナー広告を表示
することで、サイトに帰ってきてもらおうという仕組みです。

「ネットショップで商品を買い物かごに入れたが、購入処理を完了する前に用事ができてしまいそれっきり」というユーザーは実際かなり多いものです。そのユーザーが後日、他のニュースサイトでそのショップのバナーを見つけ、思い出して購入に戻ってきてくれる。」といったストーリーを想像できる企業には、とても有効なマーケティング手法といえます。

実際にサイトを訪問して何らかのアクションを起こしたユーザーにのみ表示されるため、ロスが少なく、広告主にもユーザーにも価値があるリターゲティング広告。「画期的な手法」に見えるこの仕組みにも、注意しなくてはならない問題があります。

それはプライバシーに対する感覚。

ユーザーの行動履歴を基本情報として運営されるこのシステムは、ユーザーを「追跡する」イメージを持たれかねません。

行動ターゲティングやリターゲティング広告の使い方は、今後、企業の接客態度として捉えられるケースも多いでしょう。
どの程度の情報量を預かってターゲティングを行うのか、どのレベルまでお客さまを「追いかける」のか、というバランスは、接客そのものであると私は考えています。

タイミングのいい時に声をかけてくれる店員さんはありがたいけれど、こちらは用もないのに、携帯に電話がかかってきてはたまらない。リアルなシーンでの接客スタイルと同じようなバランス感覚が、ネットでの顧客獲得の成否を決めるのです。

(2009/08/19 中部経済新聞掲載)

ページの先頭へ