第34回:ベトナムIT企業オフショア開発のこれから

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2010年1月28日

3車線の道路のいっぱいに、ひしめき合いながらバイクが走っていきます。

ベトナム最大の都市、ホーチミン市の人口は約800万人。2月のベトナムは乾季にあたり、年間で最も快適な時期だそうですが、それでも汗ばむような強い日差しとほこりの街で、整然とシステム開発を行う新興のIT企業があります。

私は今、オフショア開発先として注目されているベトナム企業を訪問しています。オフショア開発とは、システム開発運用管理などを海外の事業者や海外子会社に委託すること。安価で大量な人件費がメリットになるため、中国やインドをパートナーとする開発が中心ですが、各国の人件費の高騰により、ベトナムへの注目が集まっているのです。

訪問した企業は、トゥーティムとよばれる地域にありました。街の中心からほど近い、河に囲まれた地域は、大規模な道路建設や舗装工事の真っ最中。まだまだ「ジャングル」というイメージと突然現れた近代的なオフィスのギャップに驚きます。3階吹き抜けの開放的な空間には巨大な植物が植えられ、室内の池には色とりどりの鯉が泳ぎ、卓球台が置かれた部屋や、食事が出来る空間では、社員が活発にコミュニケーションをしていました。

約120人の社員を有するこの企業では、日本語ができるエンジニアの育成に力を入れています。社内では日本で働いた経験のあるエンジニアを中心に、日常会話から業務上の技術訓練を約1年かけて教えるそうです。工科大学と提携して、日本語のクラスを運営するなど、より高いレベルで日本の仕事を受けられる体制を準備しているとのことでした。

また、この地区をIT特区として、日本向けのサービス提供や日系企業の誘致を促進する、大規模な計画についても話を聞きました。60階以上の高層オフィスビル群の建設や地下鉄の敷設など、実に壮大なスケール。実現すれば、35000人の技術者が集まる、国内最大のITエリアになるのだそうです。

30歳以下の割合が6割以上といわれ、経済成長率の高いベトナム。今回出会った人たちからも「勤勉で真面目、誠実」な印象を受けました。寺院の彫刻や民芸品の製作技法などから感じる「高い職人気質」も、物作りの現場では共通言語として重要なものです。大卒初任給が2万円以下といわれるベトナムで、高いプロ意識を持って働くシステムエンジニアたち。日本企業のパートナーとしての可能性を感じました。

(2010/01/27 中部経済新聞掲載)

第33回:つぶやく人々、つぶやく企業

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2010年1月21日

「What are you doing?」

この「今何してる?」という問いかけに140文字以内で答えることで、ユーザーの状況や気持ちを蓄積・共有する「ツイッター」。2010年正月、ついに、鳩山首相が「つぶやき」はじめました。

@hatoyamayukioは「1日最低1ツイート」を守って運用されています。現在のところ、約18万人にフォローされている鳩山首相は、ご自身も国民のツイートにフォローを返す方針。専用のディスプレイで18万人の「つぶやき」が表示されることになるのだそうです。本当だとしたらちょっと大変な気もしますが、この仕掛けをアナウンスすることで首相と国民の距離が一気に縮まったイメージが醸成されました。コスト対効果を考えれば凄いことだと思いませんか?

ツイッターは、ブログやSNSに近い、ソーシャルメディアの1つといえますが、従来のサービスとは性格が異なります。

1.投稿後すぐに共有されるリアルタイム性
2.登録の必要がない、オープンな場
3.カジュアルでフランクなやりとり
4.短時間でシンプルな操作
5.完全無料のプラットフォーム

といったメリットと、独特の「ゆるい感じ」がツイッターの魅力。

興味をもつ人たちの、大量の「つぶやき」を斜め読みすることで、流れを把握。必要のないものをどんどんスルーしながら、必要な情報を取得するのが、トレンドになっています。企業としては、自社のアカウントをそのリストに入れてもらい、ユーザーとコミュニケーションできる場にしたいものです。

企業に向けられた「つぶやき」にお返事を差し上げれば、フォローしている他のユーザーからも見られ、リアルタイムのFAQとして活用が可能です。ツイッター内を検索すれば、自社に関する「つぶやき」を調査でき、マーケティングに活用できます。そのユーザーに積極的にメッセージを送ってファン形成を促すことも可能でしょう。

また、短時間で即効性のあるキャンペーンの告知や受付にも有効です。店舗に足を運んでもらうための、リアルタイムなインセンティブを発信するのにも効果的です。他にも色々アイディアは出てきそうですが、今までの広報や販促をそのまま持ってきただけでは、効果は低いかもしれません。

従来の企業広報とは考え方を切り替えて、ユーザー目線で「新しく、面白い」ダイレクトな情報交流のできるチームを編成して実験してみてはいかがでしょう?

無料サービスですから、まずは個人で始めてみることをお勧めします。よろしければ私のアカウント(@turbine432)をフォローしてください。企業活用のために便利な、周辺サービスなども紹介したいと思います。

(2010/01/20 中部経済新聞掲載)

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