第39回:スルーする技術

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2010年3月4日

「あっさりスルーされちゃってさ・・。」「すんません、スルーしてました。」

最近よく使われる言葉ですが、この現代語の意味をご存じでしょうか?正解は「無視する」「気にしない」。英語の「through」の本来の意味は「・・・を通り抜けて」。ドライブスルーなどのスルーですが、これが転じて「聞き流す」になり、さらに「無視する」になったようです。

最近のコミュニケーション業界には、「スルー力(するーりょく)」という言葉が登場しました。インターネットを中心とした情報技術の進化によって、私たちが取得可能な情報流通量は10年前の500倍になっていると言われます。受動的に浴びている情報の量も、相当量に増えています。その中で、正しい判断に必要な情報を手に入れるためには、情報を探しにいく技術と同様に、「不必要な情報をスピーディーに無視する力」、つまり「高いスルー力」を身につけるかがポイントになるという訳です。

いかがでしょう?皆さんの生活スタイルを振り返ってみても、なるほどと思われるのではないでしょうか。

企業は、コミュニケーション相手がこのような「スルー力」を身につけた人々であることを意識しなくてはいけません。私たちは今、自分に関係ないと判断したテレビコマーシャルをスキップし、雑誌の広告ページを一気にとばし、Web上の広告バナーが目に入らないように目線を動かす技術を身につけて、自分が選択すべき情報を手に入れることで、自分の考え方をつくりあげているのです。

それでは、スルーされない企業になるにはどうしたらよいのでしょう?

それには、スルーされない人になる方法が参考になります。クラスで人気者になる「面白い人」、会話のイニシアチブをとる「話を聞いてもらえる人」には共通点があるものです。

・自分の話ばかりせず、周りの人に気を配る人
・その場にいる人が興味を持つ言葉で話す人
・つねにハッピーな気分を分け与えている人
・周りの人に、心から興味を持っている人

企業のメッセージは「広告」から「情報」へ。自社のメッセージを伝えることに終始せず、消費者の声に耳を傾け、その興味にあわせた話法やサービスを提供。消費者が楽しくなるようなコミュニケーションを意識し研究する必要があると思うのです。そのためには、企業自身が消費者に心から興味をもつことが大切なのではないでしょうか。

(2010/03/03 中部経済新聞掲載)

第38回:コミュニケーションは変化する

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2010年2月25日

土曜日の夜8時半、見知らぬ番号から携帯に電話がありました。

「久しぶり!志水君、元気?」
なんと高校の同級生から、20年ぶりの連絡です。聞けば東京在住組による同窓会の最中らしく、お酒も入った勢いで、私に電話をしてみようということになったとのこと。憶えていてくれたことが嬉しく、一人ずつ電話をまわしてもらって話をしたのですが、集まっていたのは8人。ほんの少しの近況報告が一巡したときには小一時間が過ぎていました。しかも、こちらは同じ話を8回もしているのですから、何とも非効率です。こんな「プライスレス」な時間にもコミュニケーション効率を考えてしまうのは専門家の悪い癖だと反省しつつも、最近の情報交換スタイルがすっかり変わってしまったことを再確認しました。

ここ十数年の知人であれば、メールで一斉に連絡が取れます。ここ5年ぐらいの知人であれば、ブログやミクシィ、フェースブックなどで、常に近況を知ることもできます。ここ1-2年の知人に至っては、「今」何をしているのかをツイッターでフォローできますから、しばらく会っていなくても、近況報告抜きでいきなり本題に入れるのが「普通」になっています。

「普通」は人によってそれぞれですが、一旦普通になってしまった方法から元に戻るのは、とても不便でまどろっこしく思えるもの。人間の適応力というのは恐ろしいものです。

「アメーバなう」や「グーグルバズ」など、新しいサービスも登場していますし、ゲーム機や電子ブックリーダーなど、通信に使われるプラットフォームもますます多様化していきます。これからも進化し続けるコミュニケーションに、私たちは適応力を発揮し、生活スタイルを変え続けることでしょう。

加速度的にスタイルを変え続ける顧客に対応するため、企業は様々な動きに敏感でなくてはいけません。また、ターゲットユーザーはそれぞれのスタイルに細分化されていくため、複数のコミュニケーション手法を同時並行でプランしていくことも求められます。マスメディアによる大きな括りのコミュニケーション一本の時代から、企業対個人の細やかなコミュニケーションへとステージは移行しているようです。

件の電話口では、これからも情報交換ができる方法をいろいろ提案したのですが、同窓会にフェースブックやツイッターのユーザーは少なく、協議の結果「連絡はミクシィのコミュニティで」という事に落ち着きました。どうやら花の40歳も、ミクシィなら対応可能という事のようです。

(2010/02/24 中部経済新聞掲載)

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