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アップセル・クロスセルとは?顧客単価を上げる具体的な手法と注意するポイント | BtoBマーケティングならタービン・インタラクティブ

作成者: タービン・インタラクティブ|2023年07月11日

今回はマーケティングや営業の手法であるアップセル・クロスセルについてご説明します。
アップセルやクロスセルは、主に既存顧客に対するアプローチで、成功すれば顧客単価を大きく上げることも夢ではありません。

ただし、下手をするとただの「押しつけ」になってしまうため、慎重な運用が求められます。アップセルやクロスセルの具体的な手法と注意点まで含め、丁寧にお伝えしたいと思います。


アップセル・クロスセルとは顧客単価を上げるための営業手法

アップセル・クロスセルは、どちらも顧客単価を上げるための営業手法です。

アップセルとは

アップセルとは、顧客が現在購入している商品および購入を検討中の商品よりも上位モデルの商品を提案し、購入してもらう手法です。一人あたりの購入単価を上げることで、結果的に全体の売上を伸ばすのがねらいです。

クロスセルとは

クロスセルは、購入した商品や検討中の商品に関連する商品を勧める手法です。いわゆるセット販売もこれにあたります。クロスセルもアップセルと同じく、顧客単価を上げることで総売上を向上させることができます。

売り上げとは、単純に考えれば顧客単価×顧客数で計算できます。顧客数を増やすか、顧客単価を上げるしかありません。アップセルやクロスセルは、このうち顧客単価に注目しているわけですね。

かつては、マスメディアに対して大量の広告を打つことで認知度を高め、多くの消費者の購買意欲を高める手法など、マス・マーケティングが活発でした。第二次世界大戦後、アメリカや日本を中心に先進諸国で人口が急増したことも、顧客数を重視するマーケティング手法の普及を後押ししました。

もちろん、この時代においてもアップセルやクロスセルは行われていました。たとえば、ファストフードのチェーン店でハンバーガーを注文したときに、「一緒にポテトもいかがですか?」と尋ねるのは典型的なクロスセルです。また、自動車の買い換えのときにより高額な車種を勧めるのは、アップセルの一例と言えます。

しかし、近年はアップセルやクロスセルを重視する企業が増え始めています。人口減少化によって顧客の母数が減り、新規獲得や大量販売が以前より難しくなっていることが理由にあげられます。広く浅く多くの顧客に販売していく手法よりも、既存顧客を大切に扱い、密な関係を長く維持してLTV(ライフタイムバリュー)を最大化する方がより大きな企業メリットにつながりやすいという思想に変わり始めているのです。そんな中で、既存顧客の単価を高めて売り上げを伸ばすアップセル・クロスセルが注目されているわけです。

しかし、アップセルもクロスセルも顧客との密なコミュニケーションがないと、ただの「ごり押し」になってしまいます。特にBtoBにおいては顧客との信頼関係を築くのは容易ではなく、押し売りと捉えられれば逆効果になりかねません。アップセル・クロスセルを成功させるにはナーチャリングや営業のフォローを適切に進め、いかに顧客にとって有益な提案ができるかが重要なのです。

アップセル・クロスセルの事例

先ほどハンバーガーチェーンや自動車販売店の例を挙げましたが、他にもアップセル・クロスセルは随所で活用されています。

アップセルの事例 

ご存知の方も多いと思いますが、クレジットカード会社が頻繁にアップセルを実施しています。クレジットカードにはランクがあり、取引実績のある顧客に対して少しずつランクの高いカードへの切り替えを勧めてきます。たとえば、年会費が1万円以上(場合によっては数十万円単位)するゴールドカードやプラチナカード、ブラックカードへのランクアップによって、顧客単価の向上を図っています。

他にも、トレーニングジムや英会話スクールでのアップセルもよく目にします。これらのサービスは、月額料金で支払いするケースが多いですが、プランにより利用回数や利用できるエリア(店舗)の選択肢が異なります。
例えば、最初は一番リーズナブルな「利用店舗を限定・月4回のプラン」で開始し、顧客のモチベーションやニーズに合わせて「利用回数制限がない上位プラン」をお勧めすることなどがアップセルにあたります。月額料金は高くなりますが、一回あたりの利用単価が安くなるなど顧客にもメリットが感じられるプラン設計も重要となります。

Zoom

最近でいえば、Web会議のクラウドサービスで知られるZoomもアップセルを用いています。無料でも利用できますが、有料版を購入すると会議の時間制限が解除され、録画データのクラウド保存など利便性の高い機能が使えるようになりますよね。無料プランでサービスを体験したうえで、より便利な機能を求めて有料版を購入するため、顧客にとって納得度の高いアップセルの成功事例といえるでしょう。

クロスセルの事例

それではクロスセルはどうでしょう?たとえば、靴屋に革靴を購入しにきた顧客に対して、クリーナーやブラシ、シュークリームなどといったお手入れ用グッズを勧めることがありますが、こういった売り方は典型的なクロスセルと言えます。

Amazon

オンラインショップでも頻繁に行われています。例えば、Amazonは過去の購入履歴や閲覧履歴に基づいておすすめ商品を表示します。検討中の商品の下に「よく一緒に購入されている商品」や「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」と別の商品を表示するのも合わせ買いを促すクロスセルの手法です。

自動車の例で言うと、カーナビを勧めるのはクロスセルに当たります。

いかがでしょう?このように、たとえ言葉は知らなくても、アップセルやクロスセルを駆使している業態は非常に多いと言えます。

「ごり押し」禁物!アップセル・クロスセルの注意点

なかなか見込み客を大量に集客できない場合に、アップセルやクロスセルのような手法は企業にとって魅力的に映るものです。しかし販売側にとって大きなメリットがある一方で、顧客からすると強引に感じやすい手法でもありますから、取扱いには十分に注意すべきです。電話受注などで顧客がしっかりと理解できていないまま言葉巧みにアップセル・クロスセルの成約を取り付ける被害も報告され、電話勧誘販売におけるアップセル・クロスセルへの販売手法規制強化も検討されています。

ポイントは、あくまで顧客視点を忘れないこと。
つい売る側の都合で考えがちな手法ですから、顧客視点を常に頭に置いて施策を練る必要があります。もし、今より価格の高い商品を購入したら、顧客にどのようなメリットがあるのか。関連商品を購入したら、もとの商品と組み合わせることでどのようなメリットがあるのか。これを顧客に分かりやすく提示することで、アップセルやクロスセルの成功率は上げられます。

また、商品だけでなく企業自体に信頼がある場合も成功しやすいと言えます。長期的な信頼関係を結ぶことで、「あの企業が出した商品なのだから心配ない」と顧客に感じてもらうことができます。自社の「ファン」を作ることで、アップセルやクロスセルがよりスムーズに生まれていくのです。

長期的な信頼関係ということを踏まえますと、やはりマーケティングプロセスにおけるリードナーチャリング施策がきわめて重要であることが分かります。つまり、購買前のリードに対するナーチャリングはもちろんのこと、既存顧客へのフォローのためにもナーチャリングを行うべきだということです。

アップセルやクロスセルの実施を検討する際には、まず「ごり押しと思われないだけの顧客ロイヤルティを既存顧客に対して培っているのか」を確認することも大切でしょう。そこでは既存顧客に質のよいナーチャリング施策を実施していることが、アップセルやクロスセルの前提条件と言ってもよいかもしれません。顧客目線のナーチャリングが行われていれば、仮にアップセルやクロスセルを実施することになっても顧客目線でメリットを提示できるのではないでしょうか。

アップセル・クロスセルを成功させるための3つの手法

顧客目線の提案のために具体的に何をすればいいのでしょうか。アップセルやクロスセルを成功させるポイントと方法をご紹介します。

1.顧客情報を集積・分析して、顧客のニーズを図る

まずは相手を知ることです。個人情報や購買行動などのデータを分析することで、アップセルやクロスセルを実施する余地を見いだすことができます。そこでカギとなるのが顧客管理です。顧客の情報を集積し、アップデートし続けられるシステムが有効です。

CRM(Customer Relationship Management)やMA(Marketing Automation)、SFA(Sales Force Automation)などの管理ツールを活用すれば、各担当者の記録やメルマガの開封確認やリンククリック、ページの閲覧履歴などから「顧客がどのような動きをし、何に興味を持っているか」が共有できます。

また、Googleアナリティクスによって、どの商品が前後に見られているかなどのWeb上での主要な動きも分かります。「自社サイトのどのページを閲覧しているか」の情報は、まさに顧客の関心そのもの。管理ツールにより一元化された顧客情報は、営業担当が名刺やエクセルで個別に管理するケースより圧倒的に高い精度で顧客ニーズを推察できるでしょう。

個人情報や購買行動などのデータを分析することで、アップセルやクロスセルを実施する余地を見いだすことができます。

2.質の高いナーチャリングを行い、顧客とのエンゲージメントを高める

顧客のニーズやタイミングにあわせて有益な情報を提供することは、顧客にとっても価値があるもので、顧客と企業とのエンゲージメントを高めます。こうした適切なコミュニケーションを成功させるために、訪問者のサイト上の行動に基づき、Eメールや他のコミュニケーションを発動させる機能を持つマーケティングオートメーション(MA)の活用も有効です。

CRMやMAを使うことで、顧客がWebサイトで閲覧したページやリンククリックした商品などから興味に合わせたセミナーや資料の案内を個別に送付したり、Webサイト訪問時に表示するバナーを顧客ごとに出しわけることができます。

オンライン上であっても一律ではなく、関心に合わせた個別対応(=Web接客)をすることで、こちらの提案が顧客にとっても有益な情報に変わるのです。

例)ブログ閲覧者にメールマガジン購読を促す

例)閲覧しているコンテンツに合わせた資料ダウンロードを促す

 

3.顧客のロイヤリティや満足度を図り、施策の精度を高める

このように顧客分析をもとに行ったマーケティング・営業活動が、顧客に価値を提供できているのか、顧客のエンゲージメント(愛着度、興味・関心)を測定できるツールやプラットフォームがあるとマーケティング活動の改良も行えます。

エンゲージメントは常日頃から営業担当による聞き取りで行われますが、1対1のコミュニケーションは本音が言いづらい側面もあります。そうした心理的な負担を下げ、顧客の声をより確実に拾えるのが管理ツールを使ったアンケート調査です。特にBtoBマーケティングにおいては、満足度の高い既存顧客の発見につながるためアップセル・クロスセルをアプローチすべき顧客選びの精度もあがります。

また、エンゲージメントは満足度とロイヤリティを分けて把握するのもポイントです。顧客満足度(CSAT)とは、購入した商品に対して「どれだけ満足したか」の度合いです。対して、顧客ロイヤリティ(NPS)は商品に対する愛着や思い入れを指すもので、単発の満足度と必ずしも比例しません。ある商品を購入してある程度満足しても、次にまた同じ企業やブランドの商品を買うかといえば、そうとは限りませんよね。つまり、顧客にリピートしてもらうには満足度と並行してロイヤリティの向上を図っていく必要があるのです。

ロイヤリティを把握する手段としてアンケート調査などが活用されることが多いのですが、顧客情報を管理しているCRMと連携することで、より多くの情報を得ることが可能になります。

例えば、HubSpotはフィードバックツールを活用して顧客満足度と顧客ロイヤリティのアンケート調査をそれぞれ実施できます。多様な質問タイプとテンプレートをもとに最適なアンケート内容を作成し、EメールおよびWebページで配信。顧客からの回答は自動的にHubSpotのダッシュボードに取り込まれます。結果が視覚的に分かりやすく表示されるので、その後の分析、それに基づく対処もスピーディーに実行できます。

また、ただアップセルやクロスセルを行うだけではなく、常にPDCAサイクルを回して施策の改善を図ることです。そのためにも、顧客データを分析するチームとマーケティング・営業の現場チームなど組織内関連部署間の連携する仕組みづくりが必須です。個人や特定チームの「スタンドプレー」では、アップセルやクロスセルのような手法は成功しづらいと言えるでしょう。